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社会創発塾×胎児医療

医療を身近に

〜胎児医療という選択を知り、安心して妊娠・子育てするために必要なことを考えよう〜

というテーマでワークショップ形式のイベントを行いました。

文:林伸彦(代表理事)

開催日時:2015年7月26日

開催場所:日本橋ライフサイエンスビル(旧アステラス製薬本社ビル)

主催:社会創発塾 http://socialemergence.jp

協賛:三井不動産株式会社

参加者:一般公募(医療者・メディア・社会起業家・研究者 等)

「親子の未来を支える会」では、胎児診断によって生まれる不安を軽減させることをひとつの目標としています。ひとつの方法として、オンラインピアサポートを通じて、「漠然とした不安」を、

「具体的な不安」に、場合によっては「生み育てられるという自信」に変化させることで、新しい命に向き合えるような社会づくりを目指しています。

 また、正解がないテーマだからこそ、同様の経験をした仲間の意見を複数聞くことで「自分なりに」納得し、「自分が」ベストだと思う選択をすることができるようになると考えています。

 そこで家族の持つ選択肢は、「中絶するか産むか」というような極端なものだけではありません。そもそも胎児診断で知ることができるのは「ダウン症」だけではありません。

・何のために胎児診断があるのか

・いまどこまで診断できてどこまで治療できるのか

・胎児治療が普及することで生まれる問題はなんなのか

・胎児異常があったときに中絶を選択するのは他者に批判されることなのか

を議論する場が必要と考え、今回のセッションを行いました。

第1部

〜胎児医療とは何か。何ができるのか。世界ではどこまで進んでいるのか〜

Q. 「出産」に対して不安なこと。どんな安心が欲しいか。

Q. 「胎児医療」に何を期待するか。懸念するか。利用したいか。

"胎児医療”とは、その名の通り、生まれる前のあかちゃんに対する医療です。

「生まれつきの病気」=「治らない仕方ない」ではないという概念を伝えました。

医療には、 ①予防医療 ②検診 ③精密検査 ④治療 ⑤緩和医療

の5つの要素があると考えています。

胎児期にも同様の医療があり、それぞれについて議論になりました。

予防医療

 妊娠中の過ごし方で予防できる疾患があります。

 ・葉酸を摂取することで二分脊椎を予防できます。

 ・出生体重をコントロールすることで、糖尿病発症リスクを下げられます。 等

 日本では「障がいを予防する」というフレーズ自体が受け入れられにくい可能性があると感じました。啓蒙する方法の重要性を再認識しました。

 休憩中には、創発塾の方が、特別に葉酸入りパンを用意してくださいました!

検診

 ”スクリーニング”と呼ばれ、マイナスイメージが強いが、そこに見落とされているものがないか? 胎児検診によって見つかる ”救える命”や、”向上できる生活の質” があるが、今後どのようにそれらを見つけて救っていくことができるか?という議論をしました。

 今後国内で出生前診断がより普及することは避けられないため、何を目的に検診をしていくかを議論すべき時期にいると強く感じました。

精密検査

 異常を疑ったときに正確に評価するシステムは、非常にうまくできているように思います。最新の診断装置が開業医にも大学病院にもあり、異常を診断したときには出生後の治療についても詳細に説明される場面があります。

 一方で、生まれる前になんでもかんでもわかるようになって、生まれた後の手術のことまで説明されるようになり、いい気分がしないという意見もありました。

治療

 一部の疾患に関しては、科学的根拠(安全性・有益性)が報告され、欧米で普及しつつあること。しかし国内では胎児への治療は限定的にしか行われていないこと。

を問題提起しました。

 胎児への治療は、やはり身近ではないため、漠然とした抵抗があるように感じました。

 胎児への治療は決して「実験的」なものではなく、小児・成人に対する治療と同等に科学的検証・社会的認知の手続きが行われているという"Fetus as a patient” の考え方を紹介しました。

緩和医療

 日本の母体保護法では、胎児異常を理由に中絶をすることは認められていません。

 しかし、たとえば致死的な先天性疾患があったときに、「なにがそのあかちゃんにとって苦しくない人生か」を考える視点も必要ではないかと問題提起しました。その場合、その答えを出すのは法ではなく家族であるべきでないかという意見がありました。

第2部

〜日本における胎児医療の現状と課題〜

Q. 胎児医療は日本でも普及すべきか。すべきでないか。

Q. 普及するならどのような課題がありどのように解決すべきか。

日本ではなぜこの胎児医療が普及しないのかという議論をしました。

胎児異常による中絶が違法でありスクリーニングがタブーであること

ゆえに胎児治療の適応疾患が見つからないということ

障がいが身近でないという教育・社会の構造の問題

出生前診断の意味をわからずに勧められたり受けたりしたという現状

障がいがなくとも、妊娠・出産・子育てにともなう不安が大きいこと

医療は絶対だという妄想(曖昧なものを曖昧なまま受け入れられない社会)

などが話題になりました。

胎児医療を日本でも格差なく受けられるようになるには課題が多くあると感じました。

まずは現状において出生前診断される家族に、必要な情報を適切なタイミングで提供できる環境を

整える意義を再確認しました。そして、すでに生活されている障がい者たちが「障がい」を感じずに暮らせる社会になってはじめて、妊婦家族が本当の「選択」をできるようになるんだと改めて

感じました。

今回、胎児医療について日頃から真剣に考えてらっしゃる方だけでなく、胎児医療という単語を

聞いたことがない方も多数参加され、様々な視点で議論でき、とても貴重な機会になりました。

企画の社会創発塾医療チームのみなさん、協賛の三井不動産御中、参加者の皆さんに感謝致します。ご参加くださった方の中で一人でも多くの方が、なにか新しいことを感じ、なにか新たな行動に結びついたら幸いです。

 

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